ITの世界で、クラウドといえばAWSというのが実状です。現にGartnerが公開したデータによると、2018年度クラウドシェアの第1位はAWSで、なんと全体の41.5%にも達します。それを追うようにMicrosoft Azureが29.4%、そして本題のGoogle Cloud Platformは!・・・3%だけ。
シェアを見れば圧倒的にAWSの一人勝ちですが、クラウドを語るのに、本当にシェアだけで評価して十分でしょうか?AWSが優位といっても、ユーザのニーズにマッチしなければAWSを採用するわけにはいきません。エンジニアにとっても、今後の案件獲得のためにクラウドプロバイダーを多角的に評価しないといけません。
そこで本記事では、GCPとは何か、そしてGCPを求人案件の観点から見てどうなのかをご紹介します。AWS一辺倒な方、GCPに興味があってこれから学習しようとしている方、必見です!
目次
そもそもGCPとは何か
繰り返しになりますが、GCPとはGoogleCloudPlatformの略称です。Google社内で使っているインフラと同等のものを公開し、一般ユーザでも使えるようにしたのがGCPです。リージョン(データセンターとご理解ください)は全世界に15箇所あります(出典:GoogleCloud公式ホームページ)。
リージョン間をつなぐ光ファイバーは、その敷設距離は100,000マイルにものぼります。ちなみに100,000マイルとは16万kmで、地球4周に相当します。
サービス内容
他のクラウドプロバイダーにあるものは、だいたいあります。分野別に主なものをご紹介します。<クラウドコンピューティング>
Google Compute Engineは、クラウド基盤上にサーバーを構築するサービスです。もっと平易にいうと、仮想サーバのサービスです。OSはLinuxの各ディストリビュータ(Debian、CentOS、CoreOS、SUSE、Ubuntu、Red Hat Enterprise Linux、FreeBSD)や、Windows2008、2012、2016です。
標準のOS単体だけでなく、すでにミドルウェアをセットアップしたものをマーケットプレイスで入手すると数クリックで起動可能です。例えばWordPressやJenkins、Cassandraをセットアップ済みのものがあります。
<コンテナ技術>
Kubernetes Engineは、コンテナ技術をGCP上で実行や管理できるサービスです。しかし、この名前をGCPに関係のないところでお聞きになった方も多いでしょう。それもそのはず、KubernetesはGoogle自ら開発して、OSS化して一般的に公開されているのです。
<ネットワーク>
複数の部署がある企業内のネットワークや、企業でなくてもそこそこの数のPCやサーバーがあるネットワーク上にあるなら、複数のネットワークに分割するのが普通です。こんなとき、GCPならハブやルータ・LANケーブルといった現実の機材は最小限で、GCP内でネットワークを構築することが可能です。
<その他GCPならではのサービス>
改めて考えてみましょう。GCPとは、Googleのサービスです。では皆さんはGoogleはどのようなときに使いますか?そうです!GmailやGoogleスプレッドシート、GoogleマップなどのG Suite製品群です。
GCPはG Suite製品群との相性も抜群です。特にGoogle App Script(GAS:要はMSOffice製品群のマクロがもっと多機能になったものとイメージしてください)を使ってさまざまな連携ができるのは、他社にないGCPの際立った魅力といえます。
GCPには、ここではとても紹介しきれない多数のサービスがあります。こちらのページではそれらのサービスの概要を見ることができます。GCPの専門知識がなくとも読めるような内容なので、ぜひ一度のぞいて見ることを強くオススメします。
どうせなら、AWSのサービスと比較してみませんか?合わせてこちらも比較の対象として改めて見てみてください。両者のちがいがよく分かります。またネット上では両者の比較をしているサイトが多数あります。「AWS GCP 比較」といったキーワードで検索してみてください。
IT業界のGCPへの注目度を感じるイベント
ちょっと話題を変えましょう。2018年9月19日〜9月20日、東京プリンスホテル、ザ・プリンスパークタワー東京の2会場で「Google Cloud Next in Tokyo "18」が開催されました。国内外のGCP関係者や利用企業の著名な方々が、GCPのサービスやGCPの活用事例、実演などを披露しました。別会場ではGCPの活用事例の展示があったり、GCP関連のプロダクトを販売している企業がブースを出品していたり、と盛りだくさんでした!
初日の昼には弁当が配られ、会場の受付では折り畳み傘が配られ、2会場間は専用にチャーター&イベント向けにペイントしたバス(下の写真参照)が往復するといった至れり尽くせりのイベントでした。
各セッションは入場待ちの人だかり、展示ブースも多数の人で大盛況で、IT業界の注目度がよくわかるイベントでした。AIやIoTなどはもちろん、Webシステムのサーバーレス化などなど内容的にも豊富で、Googleの本気度が十分感じられました。来年も開催されるようですので、興味のある方はGCP情報を常にウォッチしてみてはいかがでしょうか?
GCPエンジニアの仕事内容
そもそも、どうやったらなれるのか?
魅力満載のGCP、ではGCPエンジニアとして働くためにはどうすればよいのでしょうか?GCPの案件を調査して分かったのは、GCPだけができても案件のゲットは難しい、ということです。GCP案件だからといってGCPだけを求めていることはむしろ少なく、どちらかというと必要技術の1つ、といった感じです。
よっていきなりGCPをメインに学ぶというよりは、アプリまたはインフラエンジニアとして経験を積んで基礎力をつけて、それからGCPエンジニアを目指すのが良さそうです。その方が多方面へのツブシがききます。
GCPエンジニアのタイプ別分析
各IT系求人サイトで、GCPというキーワードで検索し、ヒットした案件を分析してみました。すると、GCPエンジニアの仕事内容は以下のようなものと分かりました。<アプリエンジニア>
アプリエンジニアでどうしてGCPの知識が必要なの?と思われたかもしれません。でも、ちょっと考えてみてください。よほど経験の浅いエンジニアなら、上司や先輩のいうがままにプログラミングをするだけでしょう。しかし、少し経験を積むとどうでしょうか?
アプリエンジニアとして経験を積むにつれ、システムで何をするか、何ができるかといった「機能要件」とは別に、システムの機能と直接関係のない「非機能要件」まで設計しなくてはなりません。例えば、以下のようなことです。
- バックアップとリカバリ
- ユーザー認証やセキュリティ対策
- システムからのレスポンスは何秒以内を基本とするか(=SLA)
この事実は求人案件にも影響を与えています。案件によっては
RailsやLaravelなどのMVCフレームワークの開発経験、GCPやAWSなどのクラウドを利用した経験という要件を設けているものもありました。要は、標準的なシステム開発経験を有し、それらをベースとしてGCPの知識を持ってシステム設計ができる人が求められているのです。
クラウド、とりわけGCPの活用の広まりは、アプリエンジニアの活躍の場にまで影響を与えていることがお判りいただけたでしょうか。
<インフラエンジニア>
GCPやクラウドを手がけるエンジニアと聞いて、真っ先に思い浮かべるのがインフラエンジニアでしょう。結論からいうと、確かにGCP案件の働き方として多いのはインフラエンジニアです。ただし、インフラ技術だけ求められている訳ではありません。調査してみたところ、GCP以外に以下のような能力が求められている案件が目立ちました。
LinuxやWindowsサーバの構築、運用経験上記のうち、前者はGCPはクラウド、つまりインフラなので分かります。気になるのは後者です。案件を調査する中で、情報セキュリティに関する知見を要求しているものを多く見ました。さらに、CSIRT(Computer Security Incident Response Team : シーサート)やSOC(Security Operation Center)の構築・運用経験といった、セキュリティの世界ではかなり高度な経験を要求しているものまでありました。
IT統制、情報セキュリティの企画、構築、保守運用に関する知見
インフラエンジニアの案件で、今までもそういったトレンドはありました。しかしクラウドの特性上、自社の大事な個人情報や企業データを社外のインフラに置く以上、セキュリティには今まで以上の考慮をしなくてはいけません。加えて、クラウドの特性やGCPに関する知識や経験を最大限に活かし、かつ低コストで運用できるよう考えなくてはなりません。
今後のインフラエンジニアはセキュリティ、インフラ、そしてGCPのサービスへの理解、どれを取っても欠かすことのできない技術なのです。
<GCPの代理店勤務>
もう、GDPが好きで好きでたまらないという方にはオススメです。
GCPというキーワードで検索してヒットした案件の中には、GCPの世界では有名どころの販売代理店が何社かヒットしました。ところで、GCPの販売代理店とはなんでしょうか?GCPの販売代理店とは、以下のような仕事をしています。
- GCPの支払い代行
- 導入時の技術的フォロー
- アプリ・システム開発支援
代理店は支払いだけでなく、GCPの高い技術力を活用して導入から開発支援までの技術フォローをしてくれます。代理店の活用、検討する価値はありますよね。一方社員として働くことを考えると、代理店社内の多くは福利厚生や自己啓発として、入社後にGCPのトレーニングやGCP公認資格への取得支援制度があります。GCP好きにはたまりませんね。
現在、GCPのシェアは急速に拡大しそうな勢いです。それに伴い、代理店の多くは急成長しています。今のうちにその勢いに乗るのも良い選択でしょう。
今後増えるであろう案件
GCPのサービスは多岐に渡ります。仮想サーバやネットワークはむしろ当たり前で、AIやIoT、ビッグデータや機械学習などのサービスもあります。ということは、これら最先端技術を活用したサービスそのものを設計する仕事が増えることが予想されます。つまり、成果物がシステムではなく、ビジネス上のソリューションとなるのです。さらにそれらのソリューションを現実のものにできる設計力や技術力があれば怖いもの無しです。GCPを学習する方は、ぜひAIやIoT、ビッグデータも視野に入れてください。
GCP案件は今後減少する?増加する
本記事の冒頭でもご紹介したとおり、GCPのインフラはすでに相当な規模です。将来的にいきなりサービスを停止する、ということはもはや考えられません。またGCPのサービスは日々追加されており、利用シーンはもっと広がるでしょう。これらを総合して勘案すると、減少する傾向はまったく見られません。むしろ習得するならシェアの低い今の方がメリットが大きいといえるでしょう。
GCPのフリーランス求人案件トレンド
複数のフリーランス専用の案件紹介サイトで調査したところ、GCP案件において特にフリーランスであることに起因する特徴はなさそうです。強いていえば、GCPそのものではなく、GCPを使ったプログラム開発を重視する傾向がありました。つまりGCPをメインとしているのではなく、開発インフラとしてのGCPといった感じです。GCP求人案件の単価相場は?
単価相場は、一般的なエンジニアとあまり変わりませんでした。経験の浅い、または経験業務の幅がせまい場合、おおむね400万円以下です。しかし高度な技術を有していたり、GCPやその他多数の知見からサービスそのものを提案できるようなエンジニアを求める案件では800〜900万円という案件もありました。一方、残念ながら未経験でも可という案件は見当たりませんでした。
案件で年収・収入を上げるポイント
ここまでで出てきた内容をおさらいし、GCPエンジニアとしてどうやれば年収・収入をあげられるのかを検討してみましょう。
アプリエンジニア出身の場合
アプリエンジニアからGCPの世界へ飛び込んだエンジニアがGCPで収入を上げるのなら、まずは既存の知識や既存の設計概念をクラウドのサービスに置き換えるところから始めましょう。GCPの世界において、従来の常識が通用しないところが多数あります。それらを知りクラウドを活用するためには、当然GCPへの深い理解が必要です。その段階まで達したとすれば、すでにGCPを使ったシステム提案までできるレベルにまで来ているはずです。単にGCPを使うだけでなく、積極的な提案ができるGCPエンジニアは引く手あまたでしょう。
インフラエンジニアの場合
インフラエンジニアがインフラの仕事をできるのは当たり前ですし、もともとインフラの知識が豊富なインフラエンジニアは、GCPの技術を習得するのもさほど苦ではないでしょう。しかしそれでは年収は増えません。そこで、他のインフラエンジニアとの差別化を図るために、セキュリティの知識を強化してみましょう。先にも触れたとおり、セキュリティの高い能力を有するエンジニアは高収入を得ています。それだけ、企業におけるGCPを活用したいという要求と、セキュリティへの不安は表裏一体なのです。どの企業でもクラウドが便利なのは知っていますが、セキュリティという壁を乗り越えるのは大変なのです。
よって、従来のインフラの能力とGCPへの深い知見を持ち、ユーザのセキュリティへの不安を和らげることができるエンジニアは、大変重宝されること請け合いです。