現在有力なクラウドプロバイダーといえば、AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、そしてGCP(Google Cloud Platform)です。
今回は、その中でも現在一番のシェアを誇るAWSを「求人案件」という側面で見てみます。
現在すでにAWSを仕事で使っている方、これから学習しようとしている方、ぜひご覧ください!
大変申し訳ありませんが、クラウドとは何かといった基本的な話は理解されているものとして解説を進めさせていただきます。ご容赦ください。
目次
そもそもAWSとは
AWSとは、Amazonが設計・構築・運営するクラウドサービスです。なぜ通販業者がクラウド?
この問いに対する答えは、AWS長崎忠男社長が2015年に、某所の講演会で話した内容にあります。Amazonがさまざまなビジネスを手がけていくうちに、セールスの要求にITインフラ側が応えきれなくなりました。つまり、セールス側の「あれがしたい、これがしたい」という要求を実現するにあたり、ITインフラ側の人手不足がネックとなり、対応できなくなったのです。
そこでAmazonがITエンジニアたちが何に時間を使っているのかを調査したところ、大半の時間をITインフラの構築、つまりサーバーのセッティングや運用・保守に費やしていることが分かりました。
そこでAmazonは、仕様変更に短時間で対応できるよう、ITインフラをAPI化しました。つまりクリック操作だけでサーバーの立ち上げやその他インフラの追加や変更を可能にしたのです。
その仕組みをAmazon社内とその周辺のエンジニアに公開したところ、とても評判が良かったので、外部に提供してそれをビジネスとして展開しました。
つまり、現在では巨大になったAWSも、元はといえばユーザーへ高い満足度を提供するために生まれたというのが起源なのです。
2006年の一般公開時はS3(データストレージ)とEC2(仮想コンピューティング)しかなかったのですが、今では40を超えるサービスがあります。その数の伸びからしても、AWSの急成長ぶりがよく分かります。
AWSの規模・利用ユーザー
現在、AWSのリージョン(データセンターと理解してください)は全世界に18箇所あります。全世界で数百万、日本だけでも10万を超えるユーザーがAWSを利用しています。大規模ユーザーとしてはNetflix、NTT、ANA、クックパッド、スシローなどがあります。特にNetflixは一時期全米の通信量の1/3を占めたといわれる規模です。
2015年のAWS長崎忠男社長のコメントによると、アマゾンの年商が約7000億円だった2003~2004年頃のITインフラに等しい規模を、2015年には毎日追加しているとのこと。
他のクラウドプロバイダーを寄せ付けない規模で、拡大が続いていることを物語る表現ですね。
先発のサービスであるがゆえのメリット
若干余談になりますが、本記事を執筆する際に行った調査で明らかになったことがあります。転職サイトやフリーランスへの案件紹介サイトで、AWSというキーワードで検索したところ、大半の案件がヒットしてしまい傾向がつかめませんでした。
これはAWSがそれだけ普及した結果といえます。インフラを検討する上で、AWSはもはや当たり前の選択なのです。
AWSエンジニアの仕事内容
以降では、AWSエンジニアを以下のように定義します。
AWSエンジニアとは、AWS基盤を利用してインフラの設計や実装、運用・保守を行うエンジニアをさす「AWSを使う人」と一口にいっても、アプリのエンジニアでも最近はAWSを普通に使える人が多くなりました。よって、求人案件を調査するにあたり、上記のようにいったんインフラ系エンジニアと限定します。
ITインフラ設計
ITインフラ設計とは、要件に応じたネットワーク構成の設計や共有ストレージの選定・設計、インフラのキャパシティ管理やサーバー類の生存監視、障害監視、障害発生時にも耐えうる冗長構成などを設計することです。アプリチームのバッチ処理設計に参加することもあります。案件の中には「セールスやアプリチームの要望に応じて、インフラ設計をする」と具体的に明示された案件もありました。
旧来のオンプレミス(自前のネットワーク、サーバー機器などを使って現場に敷設するような形態)での設計を、そのままクラウドに再現してもよいのですが、そこはAWSエンジニアの腕の見せどころ。AWSのメリットを最大限に活用する設計をします。
例えば、AWS CloudWatchを使ったリソースの死活監視、負荷ピーク時だけリソースが自動で追加され、負荷が下がれば自動で元に戻るオートスケーリングなどなど、オンプレミス時代には考えられなかったことが、AWSでは普通に実現できてしまいます。
ITインフラ実装、テスト
設計が終わり、オーナー(外部のお客様や社内の部門など)の承認を得られれば、次は実装です。AWSのマネジメントコンソールから、設計に基づき各種設定を行います。完了したら、設計どおりに動くかどうか、テストです。
過負荷テストやセキュリティテスト、バックアップ取得と復元などなど、通常運用では発生しないはずだけど発生してしまった場合のテストを実施します。
すべて問題ないと確認できたら、ようやくオーナーへ引き渡しです。
運用、保守
すでに稼働が始まったITインフラを安定して動かすための作業です。AWS CloudWatchなどなどでキャパシティ管理や障害管理などは自動化できるので、四六時中画面とにらめっこ・・・という必要はありません。
しかし、定期的に状態を確認し、常に監視のしきい値ギリギリを示している項目があればリソースの追加を検討したり、障害の発生状況やユーザーからの問い合わせ数を分析してインフラ設計を見直すインシデント管理をしたり、ということは必要です。
このあたり、ある程度の運用経験が必要となるところです。
AWS案件は今後減少する?増加する?
案件の調査の結果といい、AWSがリソース追加に投入する資本といい、今のところAWSが減速する兆しがまったく見えません。今後、Azure(Microsoft)やSoftLayer(IBM)、GCP(Google)の台頭によりどうなるかわかりませんが、AWSの優位は当面揺るぎません。
ということは、AWS案件は当面増加するといえるでしょう。
AWSのフリーランス求人案件トレンド
ここ最近の、AWSのフリーランス求人案件のトレンドを見てみました。AWS自体が先進的なサービスを次々と発表しているので、それに追従する形で案件の内容も変化しています。
ストリーミング
大容量の動画配信です。代表的な例は、EdTech(教育とITを融合して、新しいイノベーションを起こす)で、授業を動画にしてサーバー側にアップして、それを配信するといったものです。これはオンデマンド配信といいます。一方、撮影した映像をそのまま配信するライブ配信もあります。
いずれも従来のインフラ技術で実装するのは困難ですが、AWSのサービス「AWS CloudFront」を利用すれば可能です。
AI、大量データ分析
AI(人工知能)関連も盛んです。例えば、食品に含まれる栄養素と専門家の知見、利用者の健康状態を総合して適切な献立を提案したり、さまざまなデータソースから利用者の好みを分析し、最適な広告を表示させたり、といった感じです。チャットボット
チャットボットとは、チャット(会話)+ボット(ロボット)の合成語で、人間の代わりにAIがテキストや音声で会話します。Amazon AlexaやGoogle Homeを連想すると分かりやすいでしょうか。その他、若干ながらFinTech(FinancialとTechnologyの合成語)関連の案件もありました。
AWS求人案件の単価相場は?
AWSエンジニアの単価相場を調べて見ました。アプリケーションエンジニアやプログラマと異なり、若干相場が高いようです。しかし、それなりに求められるものも多いようです。順に解説していきます。実務未経験
残念ながら、皆無でした。ほぼすべての案件にアプリケーション開発経験○年以上、またはインフラ運用経験○年以上、クラウド運用経験○年以上という条件が付いていました。またAWSというよりネットワークやサーバー、インフラ周りの基礎知識が必要になることが多く、そんな意味でも実務未経験では厳しいといえるでしょう。
実務経験半年
400万円ただし、1点注意が必要です。
前述の「実務未経験」で触れたように、AWS案件の多くはIT業界でエンジニアとして2〜3年の経験が求められます。IT業界で2〜3年のキャリアでいうとこの数字は決して高いとはいえないのです。
実務経験1年間
450万円実務経験2年間
500万円実務経験3年間以上
600万円実務経験5年間以上
800万円AWS案件は最高額がめざましく、まれに1000万円以上の案件があります。なぜでしょうか?次の「AWS案件で年収・収入を上げるポイント」で見てみましょう。
AWS案件で年収・収入を上げるポイント
どうすればAWS案件で年収・収入を上げることができるのかを調査しました。AWSの営業担当になってはいけない
AWSの各種サービスについて熟知しているのは、むしろ最低限のことです。しかし、それだけではいけません。AWSエンジニアは、あくまでAWSの各種サービスを使って要件を満たすのが仕事です。AWSのサービス内容をふまえて、こう使えば良いですよ、と提案しなければなりません。よって、AWSのサービスの一般的な内容を説明できるだけでなく、サービスをユーザーの要件にフィットさせるだけの深い理解と経験が欲しいところです。
最近のAWSの傾向をウォッチする
AWSの新サービス追加はいまだに続いており、その勢いに限りがみられません。つい最近も、AWS Summit Tokyo 2018で「AWS SageMaker」が発表されました。これは機械学習を実装するサービスなのですが、なんとフレームワークを指定でき、最近注目されているChainerもサポートしています。このように、AWSのサービスは順次追加されており、新しいサービスが今まで解決困難だったお客様の既存の悩みを解決できるかもしれません。
よって、今あるサービスだけに満足せず、新たに追加されるサービスをウォッチすることも大事です。
やっぱり基礎は、ITインフラ運用技術
クラウドといえども、やはり大事なのはITインフラ運用技術です。ある程度知識があれば、ネットワーク構成やサーバーインスタンスを作ることは可能です。問題はむしろそのあとにあります。プロのエンジニアとそうでない人との差は、完成したあとどのように運用するかというイメージを抱けるかどうかです。
サーバーやトラフィックを監視して規模から適切なしきい値を決定し、それを超えた場合ユーザーにどのようなリソース追加の提案をするかはとても大事です。
またはユーザーからの問い合わせを逐一記録・分析し、問題のある箇所を特定して改善提案をしなくてはなりません。また稼働後の拡張性を考慮した構成にしなくてはなりません。
そのような経験や能力を備えて、それに加えてAWSのサービスへの理解があれば、より現実的な提案ができるし、ユーザーの納得度も違います。
AWS案件で週2~3日常駐はあるの?
残念ながら、見当たりませんでした。ほぼすべてが週5勤務の案件でした。ただし、大手SIerの定時出社・定時退社の週5勤務とは異なり、フレックスやスライド勤務(12〜21時)、家族会などの豊富な福利厚生が用意されている企業が多数ありました。
今後、政府主導の働き方改革を導入しやすい自社開発企業や若手企業が、多様な働き方を導入し始めて、AWSエンジニアにも好影響が出ることを期待しましょう。
AWS案件で在宅ってあるの?
AWS案件で、リモート可という記載を数多く見ました。よって、AWSの案件で在宅勤務というのはアリです。
ただし無条件にリモート可というわけではなく、ある程度の条件付きという案件が多いのです。例えば、毎週水曜日はリモートデー、実務経験3年以上かつ会社が認めた場合のみ、という感じです。
まとめ
本記事では、AWSを「求人案件」という観点から解説しました。AWSは冒頭で述べたとおり、クラウドの中でもとても採用数の多いクラウドです。インフラエンジニア、エプリエンジニア問わず今から勉強する意義は十分あります。また、現役のAWSエンジニアの方々は、この記事を参考にぜひ求人サイトを検索して収入アップを検討してみてくださいね!