システム開発において、開発言語だけですべてを開発すること、例えばPHPならPHP言語だけで全機能を作るといったことはしません。DB(データベース)へのアクセスや画面描画といった「仕様に関係しない共通機能」は何らかのフレームワークを使うのが普通です。
言語ごとに複数のフレームワークがあります。PHPにおいても、時代とともに隆盛に乗るフレームワークがあれば、逆にピークを過ぎて廃れるものもあるのです。
フリーランスへの転身や転職を予定している方、将来に不安を感じている方には、フレームワークはとても大きな問題ですよね。自分の使えるフレームワークの流行り度合いによって、選択できる案件の幅が変わるのですから!
本記事ではPHPのフレームワーク「Laravel」をピックアップして、Laravelを「求人案件」という観点で調査してみました。
本記事の執筆にあたっては、大手のIT転職サイト2社と、ポテパンを含むフリーランス・副業向けサイト5社の計7社を徹底調査しています。
目次
そもそもLaravelとは
Laravelはどのようなフレームワークなのか、見てみましょう。そもそもLaravelとは
Laravelは、PHPで開発されたWeb開発フレームワークです。最近のフレームワークと同じく、MVCアーキテクチャを採用しています。マイクロソフトの.NETの開発に関わっていたTaylor Otwellが開発、初版は2011年6月に公開されました。最新版であるLaravel5.6は2018年2月に公開されています。
Laravelは、同じくPHPフレームワークであるSymfonyのコンポーネントを土台に構築されました。
最近のLaravelに対する注目度は高く、Googleの検索数で比較してもその人気は分かります。
その人気を受けて、インターネットを使ったオンラインのプログラミングスクールにおいて、PHPのフレームワークは大半のスクールがLaravelを採用しています。
ただ、人気はありますが、求人数・案件数で他のフレームワークと比較したところ、正直なところシェアはまだまだといった感じです。PHPフレームワークの老舗たちをしのぐほどには至っていません。特に、副業紹介サイトでは、Laralvelはほとんど登場しません(2018年7月現在)。
今後このトレンドが続き情報や書籍が充実してくると、徐々にLaravelのシェアが上昇してくるでしょう。すると、おのずと案件数や求人数・副業サイトでの登場数などが増えてくるはずです。
今後のLaravelの動向から目が離せません。
Laravelの特徴
Laravelは、他のPHPフレームワークが備えているものはたいてい備わっています。例えば、Eloquent ORMというO/RマッパーとDB定義変更のマイグレーション、Composerによるパッケージ管理、artisanコマンドでの操作、テンプレートエンジンであるbladeを使ったビューのコーディングなどなど・・・変わったところでいうと、Laravelの動作環境一式をそろえたVagrantの仮想環境「Laravel Homestead」が提供されているところや、LaracastsというLaravelの学習用有名動画サイト(有料かつ英語)があることです。
細かなところでは、他のフレームワークとのちがいは多数ありますが、基本的には大きな違いはありません。いいかえれば、他のPHPフレームワークを使っている技術者なら、Laravelの習得は容易といえます。
Laravelエンジニアの仕事内容
もちろん、Webシステムがメインです。案件情報をもとに、Laravelは具体的にどんな業種で使われているのかをピックアップしてみましょう。
大型受託案件の開発、保守運用(機能追加、速度改善など)/二次元コンテンツダウンロード販売サイト/注文建築の総合アプリ/医療システム事業/学校向けマーケティング事業/R&D事業/子供向けWebアプリ/ソーシャルゲーム開発Laravelの案件はSIer(エスアイアー)的な仕事、つまり大手の受託開発が多い中、自社開発案件も多いのです。これがLaravelの大きな特徴です。
Laravelエンジニアの働き方
自社開発案件が多い
先ほどご紹介した「Laravel案件は自社開発が多い」これがLaravelエンジニアに大きく影響を及ぼします。例えば、SIerが大手他社から仕事を受注する、または大手他社に常駐して指示に従うといった受託案件・常駐案件では、常に発注者側の都合に合わせて仕事をすることなります。
納期は絶対で、発注者側の都合ではない開発サイド都合の納期遅れなど許されるはずがありません。つまり、どれだけ働き方改革が叫ばれようと、発注者の都合が絶対なのです。
受託案件・常駐案件では仕事を現場の外に持ち出すことなど基本的に許されず、普通に常駐してガッツリと週5勤務が基本です。よってリモート勤務も厳しいのです。
ところが自社開発、つまり自社で運営するサービス等をささえるWebシステムの開発となるとどうでしょうか?
納期遅れが悪影響を与えるのはあくまで自社のサービスのユーザーのみであり、他社に迷惑をかけるわけではありません。社内の評価が悪ければ、修正して公開するということが許されます。
つまり、自社が開発の中心となるので、働き方が他社からの影響を受けず比較的自由になるのです。
現に、先に触れた業種の調査をしていても、残業時間は月間20時間以内、ワークライフバランスの重視、といった個人の働き方を優先する文言をよく見かけました。
若い企業が採用している
超大手や古くから継続しているビジネスを手がける企業は、早い段階でシステムをWeb化しました。その時代はJavaとJavaフレームワーク(Struts)しか選択肢がなかったのです。ところが比較的若い企業は、時代的に言語やフレームワークの選択肢が十分にありました。若い企業は、どうしても重厚になりがちなJavaをあえて選択せず、軽量・変更が容易といった特徴を持つPHPやRubyを選択することができたのです。
Laravelもその流れの渦中にあり、比較的若い企業がLaravelを採用しています。そもそもLaravel自体が2011年に初版が出たので、当たり前といえば当たり前ですよね。
結局、先に触れた結論と同じことをもう一度お伝えします。Laravelは比較的若い企業が採用しています。若い企業はしがらみや年功序列が少なく、慣例に縛られない、いわゆる「個人」を重視した働き方が多いのです。
Laravel案件は今後減少する?増加する?
今後の案件数の推移は、正直なところ微妙です。各サイトを調査した結果から見ると、PHPフレームワークの案件数ではCakePHPの案件数が一番多く、その次にFuelPHP、Symfonyと続きます。最近急速に伸びてきたLaravelの伸びは今一つです。どのサイトでも同じような傾向が出ました。
結局、どのフレームワークも大きく伸びたり衰退したり、といった要素がないのです。ということは、Laravelの需要は当面安定しているといえるでしょう。
Laravelのフリーランス求人案件トレンド
Laravelの求人案件における、単価相場を調査しました。Webシステム開発の相場と大きく離れてはいないようです。
実務未経験
スクールにすら通っていないというような「完全未経験」では、残念ながら案件を獲得するのは難しいです。調査した結果、完全未経験可という案件はほとんど見られませんでした。そんな中、完全未経験の方が案件獲得するのはほぼ不可能ということになります。実務経験半年
350万円(週5勤務)実務経験1年間
400万円(週5勤務)実務経験2年間
450万円(週5勤務)実務経験3年間以上
600万円(週5勤務)実務経験5年間以上
800万円(週5勤務)Laravel案件で年収・収入を上げるポイント
フレームワークのマルチリンガルを目指す
Laravelの案件は、Laravel以外のフレームワークが併記されていることが多いのです。例えば、LaravelとCakePHPや、LaravelとFuelPHPなどです。つまり、Laravelをマスターしたのなら、別のPHPフレームワークにも目を向けてみましょう。何か特別なことをしなくてもよいのです。LaravelでPHPそのものの言語仕様とMVCフレームワークの考え方を押さえると、他のフレームワークとの相違点がよく分かります。
その気になれば複数のフレームワークを習得することだって比較的容易です。
DBの知識は必須
PHPという言語自体がそうなのですが、DB(データベース)、特にMySQLとの相性が良いのです。案件情報の多くにMySQLという単語が併記されていることが多くあるのも、それが理由です。また1つのWebシステムがDBなしで成立することなどほぼありえません。フレームワークを習得した、イコールDBの知識も最低限はある、と見られることがよくあります。したがって「Laravelは分かりますけど、DBは分かりません」というのは残念な回答です。いくら直接関係がないとはいえDBをよく理解していないと、使えるLaravelエンジニアとはいえないのです。
よって、Laravelの習得とともにDBの学習もしましょう。
フロントエンジニア的な技術も習得
Laravelを使うということは、フロント周り(つまりユーザーが直接触れるUI部分)を開発することも多いということです。よって、リッチなUIを構築するために、JavaScriptだけでなく各種JavaScriptフレームワーク(jQueryやReact、Bootstrap)も習得するとよいでしょう。フロント周りは技術の移り変わりも激しく、さまざまなツールやフレームワークが出てきます。常に最新状況をウォッチしておくことも大事ですよ!
ビジネス、マネジメントスキルを養う
Laravel案件は自社開発が多い、という特徴をもう一度思い出してください。自社開発というくらいなので、自社がイニシアチブをとって開発を進めます。つまり開発だけやります、というわけにはいかないのです。案件の中には「自社ビジネスのマネージメントをお任せします」「マネージャー候補に」という、自社そのものへ貢献してください、といったものが多くあります。
エンジニアリング路線まっしぐらを目指したい、もちろんそれも一つです。しかし、自社開発にたずさわるのなら、ビジネス的ものの見方や、自社のビジネスをWebシステムに落とし込む要件定義や基本設計の力を持つと、仕事の幅がグッと広がり、収入増にも繋がります。
Laravel案件で週2~3日常駐はあるの?
残念ながら、見当たりませんでした。ほぼすべてが週5勤務の案件でした。ただし、大手SIerの定時出社・定時退社の週5勤務とは異なり、フレックスやスライド勤務(12〜21時)、家族会などの豊富な福利厚生が用意されている企業が多数ありました。
今後、政府主導の働き方改革を導入しやすい自社開発企業や若手企業が、多様な働き方を導入し始めて、Laravelエンジニアにも好影響が出ることを期待しましょう。
Laravel案件で在宅ってあるの?
こちらも、ほぼ見当たりませんでした。
ただし、前述のようにフットワークの軽い若手企業が働きやすさを追求し、インターネット環境を活用(GitHubによるソースコード管理やSkypeやGoogleハングアウトを使ったオンラインの会議など)し、在宅での案件を公開するのは決して考えられないことではありません。
現在、このような案件を狙っている方は、こまめに求人をチェックするのがよいでしょう。
まとめ
本記事では、Laravelを「求人案件」という観点から解説しました。Laravelは、FuelPHP、CakePHPと並んで採用数の多いフレームワークです。今から勉強する意味は十分あります。これからPHPやプログラミングを学ぼうとする方は、ぜひ選択肢の一つに入れてください。また、現役のLaravelエンジニアの方々は、この記事を参考にぜひ求人サイトを検索してみてくださいね!